12:笑顔の練習

「あ・・・なんだ、聞いちゃダメな事だったか?悪い・・・」

 

いつもは明るいヘンドリックだったので、急な悲しい表情に、すこしタークスは悪い事をした子供のような気持ちになった。

 

「あはは。何、気を使っているの~?子供は大人に迷惑をかけるものだよぅ。
ってか迷惑じゃないけどね。」

 

いたずらをした子供のように、ヘンドリックはぺろっと舌を出していたずらっぽく笑って見せた。

 

「彼女・・・リリスは僕の奥さんだよ。」

「奥さんって事は、あんた結婚してたんだな」

「うん、自慢の奥さんだったよ~!
ちょっと奥手だけど、そこもまたリリスちゃんの魅力♪」

 

嬉しさがこみ上げて、抱きしめているルイの手に力が強まる。

 

「・・・“だった”って事は・・・。」

 

またタークスの顔が少し曇った。

 

「・・・あはは。するどいね、タークスくんは。
・・・・・・うん、彼女はもうこの世には居ないんだよね」

 

声のトーンは低いが、笑顔で答えた。

 

「何で笑えるんだよ。好きだったんだろ?そのリリスって嫁さんが。
死んだのに、何で笑えるんだよ」

 

理解不能。いつもへらへらして、笑えば済むという甘い考え。

タークスはそんな楽観的な考えが好きではなかった。

 

「笑った顔が好きだって言ってくれたから。
彼女がそう言ってくれたんだよ。」

「何ともロマンチストなお話で・・・ごちそうさん」

「フフフ、ロマンチストで結構だよ♪
彼女が僕の笑う顔が好きと言ってくれたから、今の僕がいるんだよ~」

「笑顔ねぇ・・・。
まぁ、そいつみたいに年中くら~い顔よりかはいいか」

 

そいつ、と指差された先にはヘンドリックに抱きしめられた、ルイ。

嫌味を言われても、眉をピクリとも動かさない。

 

「ルイちゃんも、笑おうよ~!
笑うと、楽しいことが向こうからやって来てくれるんだよ?」

「わらい方・・・わからない・・・。
わたしはわらえない、です。わらっちゃダメ、です。」

 

かすれそうな、耳を立てないと聴こえないほどの小さな声でルイは答えた。

表情はあくまで無表情だ。

 

「あ、な~んだ、笑い方が分からないから笑わなかったんだね!
よし、今から僕が笑い方を教えてあげるよ!!」

 

無駄に元気に、ヘンドリックは笑顔で答えた。

 

「いや、そういう意味で言ったんじゃ・・・ねぇんじゃねーの?
そいつの場合、自分は笑っちゃいけねぇって意味・・・
はいはい、無視ね。はいはい。」

 

この対応には慣れているようで、タークスも深くは追求しなかった。

 

「えっとね、楽しい事を思い浮かべてみて!」

 

笑い方を教えるという、奇妙な光景にタークスは黙って見ていた。

 

「たの・・・しい・・・?」

 

あまり考えたことがないようで、ルイは戸惑っている。

 

「そんなに難しく考えなくても、大丈夫だよ♪
そうだねぇ、・・・うん!好きなことを思い浮かべばいいんだよ!」

「すき・・・」

 

またしてもルイは黙り込んでしまった。

 

「んとね、じゃあ僕の好きな事を言うね!
僕はねぇ、甘~~~~~~~~~~~~~~~~~~~いスイーツが大好き♪
毎日食べても飽きないよ!!お菓子があったら僕は生きていけるよ!!」

 

ヘンドリックは、自慢気に両手を広げてオーバーにリアクションする。

「いちいち派手なおっさんだ」とタークスが聴こえないほどの小声でつぶやていていた。

 

「ルイちゃんも好きな食べ物、あるでしょ?」

「・・・特に、ない、です・・・」

「好きな喰いモンっていうか、まずそいつあんまり食わねぇしな」

 

タークスが横槍を入れてきた。

 

「そっかそっか、好きな食べ物は特にないんだね!
わぁ~!ルイちゃんの事、ひとつ知っちゃったぁ♪」

 

まさかの反応に、タークスは呆れ顔で肩がガクッと下がっていた。

 

「ん~。じゃあね、僕はちょっと危ないけど、剣を振るのが好きなんだ~!」

「けん・・・」

 

珍しく、ルイが反応している。

 

「うん、剣!朝に素振りをしていたでしょ?
僕、昔は軍に・・・え~っと軍って分からないよね?
うう・・・えっと・・・?ああ、うん、誰かを守る人がいる所だよ!!」

「きし・・・」

「!!そう、騎士!!よく知っているね、ルイちゃん!
僕は昔、騎士で悪いモンスターと闘っていたんだよ~!!」

「ははうえも、きし。悪いモンスターを、たおしてました。」

「おお!!ルイちゃんのママは女性騎士だったんだ!
かぁっこいいねぇ~~!!」

 

ヘンドリックの目が輝いていた。ルイが喋る事が嬉しいようだ。

そして何より嬉しいのが、ルイの表情に変化があったからだ。

わずかだが、ルイの顔がほころんでいる。嬉しいそうな表情をしていた。

 

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暇つぶしに見てやんよ!な優しいあなたへ

オリキャラの世界を作りました。
(重い)愛♥がいっぱいあふれてます。

人生の暇つぶし程度に遊んでいってね!
描き手が喜びます!!

小説
中二病デ何カ悪イ!?
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